「Life is a series of choices.」
その言葉通り、時として人生は、主役たちに大きな決断を迫る。
借金に悩まされ、日々の暮らしにも窮するような、しがない役者――月宮神狗郎。母国・エルガンディアから密命を託された、褐色の肌を湛えるメイド姿の少女――ユエ。
二人が立つ舞台は、観光地として名高い『逢海坂』の目抜き通り。しかしそこに観客の姿はなく、戸惑う【演者】に【少女】は告げる。「皇太子の代役として、私立逢海坂女学園の才媛学科に一年間通って欲しい」と。
かくして神狗郎は、エルガンディアの皇太子『陽』として、上流階級の息女のみが集う乙女の園で『皇子』を演じることとなる。
偽りの皇子に課せられた誓約は二つ。
決して姫に、偽りであることを悟られることなかれ。 / 決して姫に、心奪われることなかれ。
誓いを違えれば、待つのは悲劇の幕切れか。けれど、【即興】で演じられる華劇では、何が起るか誰にも分からない。そこで出会う【姫君】は、『皇子』とどんな演目を演じるのか。人生は舞台。人は皆役者。恋物語に、開演のベルは鳴らない。